県央に位置する厚木市は、ビルが立ち並び少し都会っぽさもある本厚木駅周辺から少し離れると、とてものどかで緑豊かなエリアが広がります。そんな厚木市に“日本一小さい牧場がある”と聞きつけ、取材に伺わせていただきました!日本一小さい…どんな牧場なのでしょう。牧場の名は『牧歌(Bocca)』、特別に牧場内へも入れていただきました!
牧歌は“牛乳が大好きな少年の想い”が形になった場所
牧場主の河内さんは子供のころから牛乳が大好きで、いつ頃からか“自分で牛乳を搾って飲みたい!”と思い始めました。これが酪農を志すきっかけになっているそうです。厚木出身の河内さんのご家族や親族に酪農経験者はおらず、自分で夢を叶えるために北海道にある帯広畜産大学へ進学。大学卒業後も北海道に残り、1年間実習を行いました。北海道で酪農をしたいと当初は考えていましたが、河内さんが目指している酪農は“ミニマル酪農”。さすがに北海道では規模が大きすぎるため、厚木へ戻って来たそうです。
地元に戻ってきてからは、隣の愛川町で酪農ヘルパー(酪農家さんがお休みの日に、代わりに牧場のお世話をする仕事)を10年程し、その間にご実家をリフォームして『乳製品加工工房』を作りました。(工房にリフォームした場所は、お母様が行っていた公文式の教室の場所。ガラッとお家の中が変わったそうですよ)酪農ヘルパー時代の2003年頃から、厚木の酪農家さんにご自身の牛を預かってもらい、搾乳をし、チーズ作りの試作も進めていました。工房の申請には大変苦労をされたそうですが(申請に4年程かかったそうです…)、ご自身の夢を叶え、大好きな牛乳、そしてヨーグルト、チーズの加工と販売を行っています。
2023年11月29日に生まれたオスの仔牛(取材時は生後2か月弱)
ヨーグルトは作り始めてから20年以上も経ち、使用する種菌も20年間継ぎ足しで長年使用されているそうです。ヨーグルト作りの次に始めたチーズにもヨーグルトの菌を使っています。季節によって温度感が異なるため、菌の働き方も変わるのだとか。季節による微妙な味の変化を楽しめるかもしれませんね。
ヨーグルトとチーズには、牧歌で飼育されているジャージー牛のフレッシュな生乳を使用します。ジャージー牛の生乳は、味が濃く脂肪分が多いのが特徴。チーズを作る際、脂肪分が多いと酸化しやすくなりますが、通常よりも温度が低くく乾燥している保存庫を使用しているため、ゆっくり熟成し、コクのあるチーズに仕上がるそうです。工房を訪問した際にちょうどチーズ作りをされていたので、見学させていただきました!
10分の1まで凝縮される濃厚チーズ
取材に伺った日は、40Lの生乳を使ってチーズを製造中!新鮮な生乳を加熱殺菌し(加熱殺菌工程)、自家製ヨーグルトからできる乳酸菌を加え生乳のたんぱく質を固めていきます(凝固工程)。分離した水分(ホエイ:ヨーグルトの上によく浮いている水分)と固められたタンパク質(カード)とに分け、カードを型に詰めていきます(型詰め工程)。
ざるで濾してカードを型に詰めていくのですが、カードがぽろぽろとしていて“おから”のよう!河内さん曰く、“お豆腐を作るのと同じような感覚”なのだそう。
型に詰め終わったらガーゼでしっかり固定、上から重しを置いて空気を抜き、一旦この状態で休ませます(加熱鍋の中で保管)。ある程度時間が経ったら、チーズの上下をひっくり返し、重しを置いてさらに休ませます。チーズ自体がまだ温かく固まっていないため、上下をひっくり返す時はスピード勝負!ゆっくり行うと、ダラーっと型崩れしてしまうそう。この工程をチーズの様子を見ながら1時間ほど行います(プレス工程)。
しっかりと型がつきました。発酵が進むにつれ、ぽろぽろだった粒がくっつき始めて隙間がなくなり、ぎゅっと小さくなっていきます。40Lの生乳で作りますが、完成時は約10分の1の4㎏に!その後は保存庫で熟成され、できあがりは1年~2年後。熟成期間が長い分、旨味が凝縮したチーズとなるそうです♪
取材の3日前に作ったというチーズです。きれいなクリーム色ですね。ここから1年、2年と時間が経過すると、乾燥して色味が変わってきます。チーズにカビが生えてしまうのは最初の少しだけで、チーズの周りに付着している白い粉のようなものは中から滲み出てきた“脂肪分”だそうです。
写真左の棚:2年熟成チーズ、右の棚:1年熟成チーズ
生乳の量にも左右しますが、多い時で年間40個ほどチーズを作ります。牛乳とヨーグルトに使用するのは週1回分で、その他はチーズ作りに生乳を使用!(現在は、使用する機械の故障のため牛乳とヨーグルトの販売はお休み:2024年4月現在)“特別な道具はなく、台所にあるモノで代用してチーズは作れますよ”と、河内さん。今回のチーズ作りで使用していた型詰め用のお鍋も実は…パスタを茹でる鍋でした!
自慢のチーズはとっても濃厚!
工房でのチーズの購入は、完全予約制。数種類を試食し、気に入ったらチーズを購入します。河内さん曰く“牛の体調や季節によっても生乳の味が変わるので、同じものはない”とのこと。どんなチーズに出会えるのか楽しみに伺うのがおすすめ。この日は、仕上がりがとても良いという2年熟成のチーズを試食。他に、牛と羊のミルクを合わせた貴重なチーズや5年熟成の超貴重なチーズもいただきました。
写真左奥:牛と羊のミルクを合わせたチーズ、右奥:2年熟成チーズ、手前:5年熟成チーズ
2年熟成すると、風味がとっても濃厚!ですが、チーズ独特のクセはなく、とても食べやすい。少しずつ味わって食べるのがおすすめです♪ 牛と羊のミルクを合わせたチーズはまた違った味わいで、さっぱりとしながら後からしっかりコクを感じました。超貴重な5年熟成チーズは、もはや調味料!アミノ酸の塊なんだとか。味噌や醤油のように味がとても濃く、少しかじるだけでしっかりと味を感じることができます。お客様に出すと“これが欲しい!”と言う方もいるそうですが、さすがに熟成しすぎているので販売はしていないそうです。
牧歌のチーズは、チーズコンテストで入賞したり、「あつぎ食ブランド」にも認定されています◎
牛乳とヨーグルト、再開を楽しみに…
現在、販売は休止中ですが、ご自宅用に作ったという牛乳とヨーグルトを特別に試食させていただきました。
牛乳はとても味わいが濃く、牛乳本来の甘みをしっかり感じられます。牛の状態がいいと、ソフトクリームのような味わいになることもあるそう…!一度飲んでみたいですね!ヨーグルトは、甘味をたしたり果物と一緒に食べることを想定して作られているので、それ自体はとてもさっぱりとした味わいです。まだ時期は未定ですが、工房やJAあつぎ『夢未市(ゆめみいち)』で販売が再開するかもしれません。その時はぜひ味わっていただきたい商品です。
“日本一小さな牧場”とは言え、牛は3頭ほど、羊とヤギもいる立派な牧場です。柵越しに見学することも可能なので、お子様連れには嬉しいスポット。羊さんはとても人懐っこく、すぐに近くに寄ってきてくれますよ♪ 工房での購入は完全予約制となりますので、訪問したい日を事前に電話やショートメッセージにてご連絡ください。また、厚木市北西部の飯山にあるパン屋さん『ブーランジェリー ペールラシェーズ』で開かれる「飯山プチマルシェ」にも出店されているので、マルシェを楽しみながらチーズの試食をしてみるのもいいかもしれません。
美味しい熟成チーズを、ぜひお召し上がりくださいね!
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小田急小田原線「本厚木駅」よりバス「穴口橋」下車、徒歩約4分 | |
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予約制のため、事前にお電話やショートメッセージにて来店予定のご相談をお願いします | |
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