相模川沿いを走る県道にあるお蕎麦屋さん『あつぎ長寿庵』。“長寿庵”という名がつくお蕎麦屋さん、今回ご紹介するお店以外でも目にすることがありますね。はじまりは今から300年ほど前、愛知県出身の創業者が江戸で開いた『三河屋』というお蕎麦屋さんです。その後『長寿庵』と名を改めましたが、お弟子さんへ多く暖簾分けされたため、現在ではその名を冠したお蕎麦屋さんが全国に展開しています。『あつぎ長寿庵』は、暖簾分けを受け1976年に厚木市で営業をスタート。店名には“黄金比そば食堂”の文字…気になりますね！

家族で経営されるアットホームなお蕎麦屋さん

『あつぎ長寿庵』は、現在メインでお店を切り盛りしている2代目 昌宏さんのお父様がはじめられました。初代であるお父様のご出身は愛知県ですが、縁があり厚木に住むことに。横浜市鶴見区で『長寿庵』を営むご親戚のもとで修業を積み、住まいのある厚木でご自身のお店を開業。2代目の昌宏さんは、1階がお蕎麦屋さん、2階が住居というお店が身近な環境で育ちました。幼少の頃から、お店を継ぐことが当然という空気があり、それに反発を抱くこともあったそう。大学へ進学した際は教職を志し、教員免許も取得。大学を卒業する頃は“就職氷河期”と呼ばれる時代で、安定した職を求め公務員になるご友人も多かったそうです。
お店を継ぐことに反発もあった昌宏さんですが、ある出来事をきっかけにお店を継ぐことを考えるようになったと言います。それは、幼い頃に家族でよく訪れていたステーキ屋さんに大学生になってから懐かしさと共に再び定期的に通うようになっていた時、そのお店が突如閉店してしまったこと。馴染みのお店がなくなることに悲しさと寂しさを感じ、“もし長寿庵がなくなったら今の自分のように悲しむ人がいるのかな。誰が一番悲しんだりするんだろう…それは自分自身だな”と考えたそうです。
お店を継ぐことを決意し、大学卒業後は調理学校等には通わず、お父様のもとで修業。“料理や蕎麦について何も知らないからこそ、それが強みになったと思います”と昌宏さんはお話してくださいました。
現在も現役のお父様とお母様、パートさんと4人でお店を運営していらっしゃいます。

あつぎ長寿庵だけのオリジナル「黄金比そば」

お蕎麦屋さんでは、「十割蕎麦」「二八蕎麦」とよく耳にしますよね。これは、そば粉とつなぎの割合を示したものですが、こちらではそれとはまったく異なる「黄金比そば」を提供しています。
お父様の代からほぼ変わっていないという「黄金比そば」。“つなぎ”は単に繋ぐ役割ではなく、そば粉と混ざってお蕎麦を“よりおいしくしてくれる物”と考えているから、そば粉をあえて低い割合で配合し、一番お蕎麦がおいしいと感じる黄金比で製麺をしているそうです。長年かけて辿り着いた黄金比、もちろん企業秘密です！
そして、少しでも多く安定的に製麺し、たくさんの方にあつぎ長寿庵のお蕎麦を食べてもらいたいという想いから、機械製麺を行っています。
出汁には高知県から取り寄せた宗田節と鯖節の2種類を使用し、秘伝のかえしと合わせてオリジナルのつゆを毎日作っています。
“すまして食べるお蕎麦ではなく、おいしいものをたくさん食べてもらいたい”と昌宏さんは教えてくださいました。早速人気のメニューをご紹介します！

ボリューム満点。大盤振る舞いな黄金比そば！

あつぎ長寿庵の側には中小企業が多く、平日のお昼時は駐車場も店内の席も埋まってしまうほどの人気！人気の理由は、お蕎麦の量にもありそうです。今回は年間を通して人気の2品と、定食メニューから1品注文しました。

人気NO.1　たっぷりネギが嬉しい「鴨せいろ」
年間を通して1番注文が入るという「鴨せいろ」。見てください、このお蕎麦の盛られ方！一般的なお蕎麦屋さんでは大盛りレベルですが、これで並というから驚きです。黄金比そばは、つるっとのど越しが良くとても食べやすい。お蕎麦としては少し固めでしっかりした印象です。アツアツのつけ汁は、毎日丁寧に作られるつゆと弾力がありながら柔らかな鴨肉、たっぷりのネギ。つゆまでおいしく、飲み干してしまいました。

お客様のリクエストで通年提供になった「冷やしたぬきそば」
こちらの「冷やしたぬきそば」は、元々夏季限定で提供していたそうです。とても人気で、“夏以外も食べたい！”というお客様からのリクエストに応え、今では通年提供される定番のメニューになりました。黄金比そばの上には主役の揚げ玉がたっぷり！カラッと揚がっていて風味がいい。（その秘訣は後ほどご紹介！）揚げ玉の他にも水菜となると、そして玉ねぎ！味のしみ込んだしゃきしゃきの玉ねぎが、いいアクセントになっています。この玉ねぎも甘みがありおいしい。お蕎麦の量もやはり多めですが、おいしいつゆと具材で完食です。

お腹いっぱい食べたい方におすすめの欲張り定食！「チキンカツ定食」
定食メニューの中から、チキンカツをご紹介。通常の定食はライスの提供となりますが、セットでざるそばを付けていただきました。満腹間違いなしのセットです！（今回は特別に、ご飯の代わりにお蕎麦にしていただきました）早速揚げたてのチキンカツをいただくと…サクッといい音！（同行したスタッフからも“いい音～”と声がもれました）食べてびっくり、とっても柔らかい！身がふっくらジューシーな鶏もも肉は、揚げてあるのにしつこくない。このおいしさにご飯がよく進みそう…。
柔らかく揚げる秘訣を聞いたところ、揚げ油との相性がいいのかもしれません、とのこと。天ぷらや先ほど登場した揚げ玉、カツなどを揚げるのに使用している油は、サラダ油とごま油をブレンドしているそう。確かに、ほのかにごまの香りも感じました。これが、揚げ玉の風味がいい秘訣！ぜひ天ぷらや揚げ物を召し上がっていただきたい！

今回、「チキンカツ定食」でご飯抜きのリクエストをさせていただきましたが、玉ねぎ抜きやネギ抜き、ネギ多めといったお好みにも応えてくれるそうです。ホールをご担当されているお母様にお声かけくださいね。
また、配達範囲は限られますが出前も可能です。現在もお父様が出前を行っていらっしゃるそう！お近くの方はぜひ♪

2代目の昌宏さんは厚木生まれ、厚木育ち。本厚木駅南口を盛り上げようと活動もされています。“南口にもいいお店はたくさんありますよ”と教えてくださいました。次はどんなお店をご紹介できるか楽しみです。
黄金比そばをお腹いっぱい楽しめる『あつぎ長寿庵』。ぜひ訪れてみてくださいね。