4年ぶりに開催!『令和5年度 相模の大凧まつり』

相模川の河川敷を大きな凧が舞う『相模の大凧まつり』。毎年5月4日・5日の2日間にわたって開催される伝統のお祭りでしたが、近年は中止を余儀なくされていました。やっと開催できる今年のお祭りは、実に4年ぶりの開催!市民の方はじめ、多くの方が開催を心待ちにしていた大凧まつりに行ってみました♪

相模の大凧まつりとは

相模の大凧特集でもご紹介をしていますが、凧を揚げる歴史は古く、天保年間(1830年頃)から行われてきたと伝えられ、明治時代からは現在のような大凧揚げとなったそうです。子供(男の子)の誕生を祝って揚げていた凧は、次第に「豊作祈願」「若者の意志や希望」など地域的なものへと変化していきました。現在では、相模原市南区新磯の4地区(新戸、勝坂、下磯部、上磯部)が合同で『相模の大凧文化保存会』を設立し、お祭りを運営しています。凧は4地区それぞれで制作し、各地区の会場で揚げられます。

天候に恵まれた相模の大凧まつり

ゴールデンウィーク真っ只中の5月4日、5日。待ちに待った大凧まつり当日です!今年の題字は「勝風」。同じ題字でも個性が出るので、各地区の大凧がどのように仕上がっているのか楽しみです。駅から会場までの道のりには『相模の大凧まつり』と書かれたブルーとピンクののぼりがずらりと飾られ、お客様をお出迎え。わくわく感も最高潮!

ー1日目ー

各会場に着くと、屋台があったり、地域の方の催し物があったり、お客様もたくさん来場され、久しぶりに感じるお祭りの雰囲気です。
凧を揚げる前に、最後の仕上げを行います。今まで作った骨組みに題字を書いた和紙を取り付けていくのですが、どの地区も4年ぶりのこと。“あれ、こうだったっけ?”“こうやるんじゃない?”と確認をしながらの作業だったようです。ここで、【下磯部地区】ではハプニング発生!!順調に題字貼りの作業が進んでいるかと思いきや、“あれ?何かが違うよ!大変!タイムスリップしちゃってる!(汗)”と大騒ぎ。

なんと、取り付けていたのは4年前(2019年)の題字「令和」が書かれた和紙…皆さん焦りながら大笑いしていました♪
和紙を取り付け大凧が完成すると、風を見ながら凧を揚げるタイミングを慎重に見極めていきます。

【新戸地区】
新戸地区は、日本一大きな凧を揚げます!大きさは1辺14.5m、畳に換算すると128畳分、重さは約1トンの8間凧!これだけ大きな凧を揚げるためには、風速10m近くの強い風が必要となるそうです。

少しずつ南風が吹き始めた午後、各々配置についてチャレンジスタート!凧を起き上がらせ風を受けやすいようにする係、凧の裏面で待機し地面から離す係、“引手”と言って凧の綱を引く係、総勢100名を超える方々がスタンバイします。一瞬、地面からふわっと浮きますが、なかなか上へ揚がらない…うまく着地できずに折れた竹の骨組みの補修を行い再チャレンジ、を繰り返しますが、この日は揚がらず、2日目に持ち越しとなりました。

【勝坂(かっさか)地区】
勝坂地区は、凧の種類がたくさん!一番大きなものは5.5間、その他3間、2間、1間と続きます。

5.5間の大凧揚げに何度かチャレンジするも、骨組みが折れて修理が必要に…。こちらも大凧チャレンジは2日目に持ち越しです!

【下磯部地区】
和紙の取り付けではハプニングのあった下磯部地区。その後取り付け直し、無事に6間と3間の大凧は完成しました。
新戸・勝坂地区の会場よりも少し上流に位置する下磯部地区の会場。場所が変わるだけで風の入り方にも変化があるそうです。小さい凧を揚げながら風の状況を確認し、午後にまずは3間凧のチャレンジ!(お昼には、奥様方が前日から仕込んだ豚汁が振る舞われました)風を見る係の方の旗が赤旗→白旗に変わったら、皆さんで息を合わせて走り始めます。その瞬間、3間凧が空へ舞い上がりました!感動の瞬間!観客の皆さんからは歓声と拍手が沸き起こります。計10分ほど、安定して空を気持ちよさそうに泳いでいました。

続いて6間凧も何度かチャレンジしましたが、いい風が見込めず、こちらも2日目に持ち越しです。

【上磯部地区】
大凧制作の様子を毎週密着取材させていただいていた上磯部地区。上磯部地区の会場は、他の3地区からは少し離れた場所にあります。毎週のように会っていた皆さん、この日は普段の大凧制作の時とは違い、白いズボンに足袋、個性が光る腰巻、新調された“相模の大凧”の法被を身につけた正装の姿。とても素敵です!

1日目はあまり風が強くなく、3間の凧揚げにチャレンジ。待ちに待った大凧揚げ、凧が持ち上がり大空へ舞い上がる瞬間は客席からも大きな歓声が上がりました!上磯部地区では会場に櫓が組まれ、会員の方が実況中継を行っていましたよ。

どの地区の会場も1日目はいい南風が吹かず、各地区の一番大きな凧が空を舞うことはありませんでした。ですが、3間凧や少し小さめの凧が揚がった時は、どの会場も喜びの歓声や拍手が上がり、ご来場の観客の方がどれほどこの瞬間を楽しみにしていたのかを肌で感じました。2日目は、各地区の一番大きな凧が舞い上がることを願います!

ー2日目ー

2日目も1日目と同様、凧の骨組みに和紙を取り付けるところからスタートです!(和紙は風や雨に弱いため、1日目が終われば取り外し、濡れないように保管をします) 朝から強めの南風が吹いており、絶好の凧揚げ日和!

【新戸地区】
日本一大きな凧を揚げる、新戸地区。今日こそは、大凧が空を舞う姿を見てみたい…!
1回目のチャレンジでは、うまく揚がらずに骨組みが再度折れてしまいました。補強をし、いざ2回目!大凧が宙にふわっと浮きました!

力を合わせて綱を引っ張り大凧を揚げようとしますが…8間の大凧が揚がるほどの強い風が吹かず…バランスを崩し、また骨組みが折れてしまいました。やはり、風の力なしではこれだけの重さの凧は空高く揚がりません。今回はダメージが大きく、チャレンジはここまでとなりました。来年こそは、新戸地区の8間凧が揚がるところを楽しみにしています!


【新戸地区会員の皆さん】

【勝坂地区】
勝坂地区では、会員の皆さんに加え、自衛隊の方々や大学生の方など多くの力を借りて2日目がスタート!風が吹き始めて白旗の合図が出た瞬間、凧を起き上がらせる係の方が凧の下に入り一斉に持ち上げると、凧はふわりと浮いてきて、綱を持った方が走りながら引っ張ります。凧が軌道に乗ったら、一斉に綱を手から放します。風に乗り始めると凧は左右に揺れながら空へ上がり…無事、勝坂地区の大凧も空に舞い上がりました!

風が弱まると凧は落ちてきてしまいますが、綱を巧みに引っ張ると、また空高く上がっていきました!勝坂地区の5.5間凧も気持ちよさそうに泳いでいます。


【勝坂地区会員の皆さん】

【下磯部地区】
午後になると南風が強く吹いていたため、下磯部地区の6間凧も風に乗り、あっという間に空高く揚がっていきました!大凧を揚げたい強い思いが空に届いたのでしょう。

いい南風が吹き続け、大凧まつり終了時刻の16時になっても大凧は空を気持ちよく舞い続けています。南風もどんどん強さを増し、人力で降ろすには危険が伴うのでしばらく様子を見ることに。初めての出来事に会員の皆さんも“どうしよう…”と心配そう。しかし、待てども風は収まらず、このままではいつ凧が降りるのかもわからない…万が一事故につながってしまう前に凧を降ろしたいと、人力で降ろすことになりました。新戸地区の方々にお手伝いしていただき、何とか凧を降ろすことに成功。日本一の大凧を扱う新戸地区の会員の皆さんは、凧を降ろす作業も心得ていらっしゃるようです!無事に凧を降ろすことができ、ほっと一安心でした。


【下磯部地区会員の皆さん】

【上磯部地区】
上磯部地区の会場も、朝からいい風が吹いています!なんと、上磯部地区会長のご厚意で午前中の凧揚げに参加させていただくことに…!綱の持ち方、離すタイミングなどをご指導いただき、いざ、3間凧揚げに挑戦!白旗が上がると、私も綱を持つ皆さんと一緒に走り出します。

何度かチャレンジしましたが、宙に少し浮いてもなかなか空へは揚がらず。風が安定しなかったため、ついに着地の際に骨組みが折れ、補修が必要となりました。
午後一番は、6間大凧揚げにチャレンジ。南風が強めに吹くと、ふわっと大凧が宙に浮き空へ舞い上がりました!会員の方々、観客の方から大きな歓声!この時を皆さん心待ちにされていたのですね。しかし、風のいたずらはいつ訪れるかわかりません…風向きが少し変わり、凧が大暴れ!!相模川付近へ落下、さらに吹いた強風で一部が川へ落ち、骨組みは大きく折れてしまいました。制作の工程を見てきていただけに、悲しい…。ここまで壊れてしまっては修復が難しく、6間大凧揚げはここで終了となりました。
その後は、気を取り直して3間凧揚げの再チャレンジを行い、強い南風に乗って今度はスムーズに空へと舞い上がりました!


【上磯部地区会員の皆さん】

お祭り終了間際、凧を降ろす作業も見学させていただきました。綱の先端からゆっくり地面に降ろし凧の方へと近づいていくのですが、凧と風の力が加わった綱はとても重く、体重をかけながら慎重に手繰り寄せていきます。風が強くてなかなか降りてこない凧の糸目を強めに引っ張って暴れる凧を沈めながら、息の合った連携で凧は地面に降りてきました。大凧は揚げるのも大変でしたが、降ろす作業も同じくらい大変な作業なのだと実感しました。


(下磯部地区の大凧降ろし)

4年ぶりの大凧まつりは、各地区とも“感動”や“ハプニング”がたくさんありました。ご来場のお客様もそうですが、無事にお祭りを開催出来たことが相模の大凧文化保存会全体にとって、とても喜ばしいことだったと思います。また来年も、大凧が天高く揚がる姿を楽しみにしていましょう!いい南風が吹くことを願っています!