ジモット人 INTERVIEW

ジモトを愛する方々にインタビューしました!

vol.10| 農家レストランいぶき 代表 冨田 改さん

私の住む町は魅力にあふれている!
気づいた人が地域おこしに取り組もう
農家レストランいぶき 代表 冨田 改さん

関東で初めて国家戦略特区の承認を得て、農地につくられた「農家レストラン いぶき」。地産地消の旬の野菜をおいしくいただけるだけでなく、実はもっともっと大きなプロジェクトのなかでつくられたレストランです。「いぶき」の代表であり、樹木医であり、近隣にある「藤沢えびね・やまゆり園」を管理するNPO法人の代表であり……、さまざまな活動をされている冨田 改さんに、遠藤エリアを舞台にした大きな構想や地域への思いをうかがいました。

 

住む町はいい場所であってほしい、その思いが原点

― 冨田さんが生まれ育った、遠藤(藤沢市)について教えてください。

遠藤は自然が豊かな場所です。私が子どもの頃は、野山を駆け回って鰻を釣って遊んでいました。藤沢の中心地まで10km、茅ヶ崎や厚木にもそれぞれ10kmほどと何もない不便な場所とも言えるのですが(笑)


― 最近は生まれ育った町と疎遠になっている人も多いと思います。
  冨田さんは、何をきっかけにふるさとを大切に思えるようになりましたか?

大学進学を機に、遠藤を離れて府中や松戸に住んでいた時期がありました。ここを離れた経験が地元愛を深めてくれたように思います。谷戸(やと:丘陵地が侵食されてつくられた谷状の地形)が多い遠藤は農業には向かず、私が子どもの頃は貧しい人も多かった。けれど私は、ここの自然や景色が好きですし、失いたくないと思ったんです。
それに、造園を志したことも影響しているかもしれません。造園は何もないところに緑を入れて1から造り上げていくものですが、「遠藤には活かす自然、ありのままの自然がある」と思ったんです。


― 離れたことで、住んでいるときは当たり前に思えたものの価値に気づけたわけですね。

そうですね。それに誰もが思っているはず。「自分のふるさと、自分の住んでいる町は、いいところであってほしい」って。地域おこしとか、地域のためにとか、そんな大袈裟なことではなく、そんな地域への思いがあれば十分。たくさんの人の同意を得ることも大切ですが、それを待っているとタイミングを逃してしまうことが多い。だから行政や人任せにせず、気づいた人が始めたらいいと思うんです。
それで私は60代半ばで造園の会社を息子に譲り、地域の取り組みを本格的に始めました。勇気のいる決断でしたが私財を投じていることもあって、腹をくくって「やるしかない」と思えましたね(笑)

 

「遠藤まほろばの里」構想をもとに地域おこしを推進


― 具体的にどのような取り組みをされていますか?
  まずは「農家レストラン いぶき」について教えてください。

地域を活性化するためには、多くの人に来てもらうことが重要だと考えました。それで最初に、藤沢市北部の地域おこしとして「遠藤まほろばの里」という大きな構想を描きました。そこには、広く開かれた里山があって、多様な農業活動ができて、湘南最大規模の菖蒲園があって……と。そのなかに農家レストランのアイデアもありました。本来、農業振興地域にレストランを建設することはできません。けれど、私の思いを知った知人の紹介やサポートもあり、関東初の国家戦略特区の承認を得て「農家レストラン いぶき」をオープンすることができました。

 

 

― 特別な場所に「農家レストラン いぶき」はあるんですね。

しかも、特区の承認を得るのは簡単なことではなく、国会議員会館、内閣府、県や市の農政課、水産課、開発課を行ったり来たり、書類もたくさん書きました……。応援してくれる人はいましたが、建築の許可がおりるまで足掛け3年を要しました。
オープンしてからは、友人から「3回お店に行ったけれど満席だった」と言われるほど、おかげさまで多くの方の注目していただいているようです。リピーターも増え、コロナ禍以前は団体で利用していただくこともありましたね。地元の農家さんから直接仕入れた野菜を提供したり店頭で販売するなど、店を起点にした循環も生まれています。

『レストランいぶき』のテラスには季節の花々が咲く

 


― その他にどのような活動をされていますか?

「遠藤まほろばの里」構想の一つ、「藤沢えびね・やまゆり園」を2015年に開園しました。遠藤に残る里山の自然景観を多くの人に楽しんでいただける場所です。エビネ、ヤマユリ、ヒメユリ、ヤマアジサイなど約130種類の季節の山野草を観賞できます。ここは私が代表を務める「NPO法人 里地里山景観と農業の再生プロジェクト」が保全活動をしていて、後進の指導や経験の場、フィールドワークの場としても活用してもらえたらと思っています。
他には、樹木医として地域に残る古い木のお世話をしたり、「藤倶楽部」として藤沢市の花である「フジ」を守り育てる活動などもしています。

『藤沢えびね・やまゆり園』 園内とエビネ

 

次の世代を担う若者に遠藤の自然に触れてもらいたい

― 冨田さんの活動は本当に幅広いですね。
  これまで地域に関心が持てなかった層や若者世代は
  どのようにかかわっていくのがよいでしょうか?

人の感性はさまざま。例えば、私のように「田舎がいい」という人もいれば、「利便性の良さがいい」という人もいる。まずは、地域のコト・モノに興味を持ってもらうことが重要だと思いますね。
若者世代でいうと、慶應義塾大学の研究室から私の活動を手伝いたいと声をかけてもらっています。私自身、山野草にかんする本を何冊も買って調べていますが、いまだにわからないことも多い。学生さんに継続して観察、研究してもらえたら、もっと深く遠藤の自然のことを知ることができるはずなので大いに期待しています。


― 「遠藤まほろばの里」として取り組みたいことはありますか?

遊休農地を借りて家族で農業体験ができるようにしたいです。野菜づくりはもちろん、「セミがいた」とか土を掘ったら「ミミズやダンゴムシがいた」とか、小さなお子さんにとっては、生命と触れ合うことで感情が豊かになると思うんです。農園があり、里山公園があり、レストランがあって季節によってブルーベリー摘みもできる「遠藤まほろばの里」が、もっと多くの人で賑わうといいですね。


― 2022年の夏には、新たに「遠藤笹窪谷(ささくぼやと)公園」がオープン予定だそうですね。

そうなんです。直近の私の目標は公園内にある「菖蒲池」の整備です。湘南最大規模になる予定なので、話題づくりができたらうれしいです。オープンの際には「JIMOTTO」も一緒に盛り上げてくださいね(笑)

 

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